今回は実際にどのように留学生がフランスの法学部の授業のノートを取っているのかということを紹介していきます。もちろん、これは単に、私が行き着いた私にとってやりやすい方法であるにすぎません。これがなにかしらのヒントになれば嬉しいです!
※これは、「フランス留学勉強日記」という私が以前書いていたブログにて、 に投稿された記事です。昔の記事をこちらのブログに移設中です。
1. 授業録音について
まず、授業のノートの取り方に入る前に録音について触れておきます。授業のノートが取り切れるか不安だ…録音しようかな…と考えている留学生もいるかと思いますが、録音はお勧めしません。理由は2つあります。
まず第一に、フランスでは許可なく録音をすることは違法行為です。授業の録音をしたい場合は必ず先生の許可をとる必要があります。勝手に録音することはできません。しかし、録音させてくださいと言って断られる場合もあります。前の記事でも触れた通り、授業は先生方の著作物ですから、外部に渡ることをとても警戒されます。もちろん、他人に録音を渡すことは論外ですが、個人での使用もかなり警戒されます。
第二に、録音を聴き直す時間なんてありません!単純に授業も課題もたくさんある中で、同じ授業を何回も聞く時間はありませんから、録音するだけ無駄です。
それでは、本題に入っていきましょう。
2. 授業前の準備
私は授業ノートは全てパソコンのWordで取っています。なんだかんだパソコンで打った方が後々見返す際に楽ですし、欠席などで後日友達からノートをもらったときにそのまま文書を挿入しやすいです。うちの学部ではクラスの学生のほとんどがノートパソコンやアイパッドでノートを取っている印象です。理系になると数式や化学式などを扱う関係で手書きの方が多いようです。ワードでなくてもどんなワードプロセッサーでも構わないと思います。
それを踏まえた上で、授業前の準備を紹介します。
章立てのスタイルをワードプロセッサで設定する
はじめに、授業前にワードファイルの「スタイル」で章立ての形式を設定します。法学部での(というか、フランスでの?)一般的な章立てというのは以下のようになっています。
Partie
Titre
Chapitre
Section
I. (ローマ数字)
A.
1.
a.
… (先生によっては α(アルファ)を使う)
これらを順番に「スタイル」に設定していきます。するとこのようになります。

私は一つのファイルで用意して、それをテンプレートとして保存しています。授業ごとに「名前をつけて保存」でファイルを複製していくことで「スタイル」の設定を一回で済ませています。
あらかじめ「スタイル」の準備をしておくことで、授業中にもたもたせずに入力ができますし、また、目次を挿入することで自動的に授業のアウトラインを生成することができるようになります。アウトラインがあれば自習の計画も立てやすいですし、対応する演習の授業のために予習をする時もどこを何ページ読めばいいのか一目瞭然!自動的に復習便利ツールが作れる優れものなのです。

授業の目次をあらかじめ打ち込んでおく
もし、授業の目次が事前に配られているのであれば、授業前に入力してしまいます。先生が来るまでの待ち時間や、長い授業の中休みなどでちょこちょこっとやってしまうのがいいでしょう。ワード形式でくれる優しい先生ならば、そのままコピペをしてスタイル設定を適用するだけですが、そんなに優しい先生は滅多にいないので大抵コピーができないPDF形式、あるいは印刷したものが配られます…。地道に打ち込みましょう。
パワーポイントの内容をノートにコピペしておく
もっと優しい先生がパワーポイントをくれた場合は、そのまま内容をノートのドキュメントファイルに写しておきます。
私にとっては、ほぼ出会えない幻の準備です…。
3. 授業中
授業中は、神経を研ぎ澄ませ、話を聞き、内容をノートに書きとる(打ち込む)一番緊張する瞬間です。もちろん、先生が言ったことを全て書き取れるわけではありません(日本語でだってそうですよね)。情報の取捨選択と用語の簡潔化がポイントになります。
章立てに全神経集中、聞き逃したらその場で友達に聞く
一番聞き逃してはいけないのが、「章立て」です。これがアウトラインになり、あらかじめ設定をしておいた「スタイル」を適用する、いわゆる学習内容の「タイトル」となる部分です。
ここさえ押さえておけば、あとで教科書で情報を補完することができるので、ノートを撮る際にとても重要です。もし聞き逃してしまったら隣の友達に見せてもらう、手を上げて先生にもう一度行ってもらうように頼むなどして書き取りましょう。裏技として、みんながパソコンでノートを取っているのを利用して文字を大きめにしている人の後ろに座って覗いてしまうというのもアリかもしれません。
話の区切りごとにバレットポイントを使おう
バレットポイント(bullet point)とは、いわゆる行頭文字のことです。最近人気のバレットジャーナルなどでも使われる言葉ですね。
この写真のように、「・」を使って、話の区切りを分けていきます。さらに、授業中に情報が階層化されているのを可視化することで理解も深まります。パラグラフごとに続けて書いてしまうとあとで読み返すときにわかりにくく、情報の一覧性に欠けてしまいます。

先生の話は、「先生が自身のノートやメモから読み上げるところ」と「説明を加える・例を挙げる」部分に分かれます。そこが話の切れ目です。したがって、読み上げているところが始まったら新しいバレットポイントを使いはじめ、説明や例が終わったなと思ったら行をかえて次のバレットポイントに移ります。これを繰り返していくことで、一つのバレットポイントに対して一つの概念・事例・説明とまとめられていき、復習する際にとても楽になります。
略語を駆使しよう
さらに、上の写真からもわかるように、私は “C”、”D”、”O” などの略語・略字を使っています。それぞれ、contrat (=契約)、droit (=法、権利など)、obligation(=債務)を意味しています。自分だけが分かればいいので、好きにわかりやすいものを考えて決めておきましょう。(そのほかに “JP” は jurisprudence(=判例)、”C. civ.” は Code civil (=民法典)などなどたくさんあります。機会があればいつかまとめて紹介します。)
最初はフランス語も難しいですし、ノートを取ること自体に慣れず、かなり難しく感じると思いますが、だんだんと慣れていきます。
情報の取捨選択の仕方
私が勉強している法律の場合に限ることかとは思いますが、基本的に少し探せば見つけられる情報はノートに取りません。
例えば、法律の条文。先生が「民法第xxには…とあります、これは〇〇の原則です。」と言ったとします。この場合、私は条文の番号と原則の名前だけを書き取り、条文が具体的に何を言っているかはメモを取りません。これは復習の段階で後から条文をコピーしたものを挿入します。
あるいは、例が列挙されていたら、そのうちのいくつかだけをメモしておきます。大体の例が分かれば、あとで教科書などを読んだときに残りの例も出てくるのでそのときになってからノートに書き足せばいいからです。
4. 授業後
授業後に情報を整理し直すことはとても大切です。のちの復習が格段とやりやすくなります。これらは「授業よりあと、でも復習より前」の間のステップです。
主にやることは3つ。
- スペルミスの修正・キーワードを太字に:文字通り、スペルミスは必ずあります。一度読み返して文が変ではないか、スペルミスはないかをチェックして修正します。休憩時間などにささっとやってしまうと記憶もフレッシュな段階で「ここ何言ってたんだっけ?」となることなく修正できます。
- 条文の挿入:これは法律特有ですが、授業中にメモした条文番号の条文をネットからコピペで挿入します。手で打つより断然楽です。
- バレットポイントごとにタイトルをつける:先ほど授業中にバレットごとに情報を分けてノートを取りました。この段階では、そのバレットごとに自分なりの「タイトル」をつけていきます。基本的にはキーワードを文頭に付け足して、太字にしておき、そのあとに「:」を入れておしまいです。例えば、先程の例で言うと、先生が「民法第xxには…とあります、これは〇〇の原則です。(その後説明が続く)」という場合には以下のようにします。
- 民法第xx、〇〇の原則(説明…)←授業ノート
- 〇〇の原則(民xx条):民法第xx、〇〇の原則(説明…)←タイトルをつける
ここまでやっておくと、教科書を読んで復習するときにでも、読んでメモを取っておきたい内容が、授業のどこに関連しているのかが一目瞭然です。
最後に、外国語でノートを取るというのはとても大変な作業です。どうやってもその言語を母語とする学生と同じようには取ることができません。また、ノートが取りやすい話し方をする先生、そうではない先生がいるのも事実です。自分なりの努力を怠ってはいけませんが、同級生に助けを求めることも決して恥ずかしいことではありません。どんどんお願いをしてノートを見せてもらいましょう。一番重要なのは、試験の時に答案が書けるようになっていること、そしてさらにはその知識が将来使えるものとして身についていくことです。(と、私は自分に言い聞かせています。自己暗示大切よね。)
私自身もまだまだノートの取り方、予習の仕方、復習の仕方などなど模索中です。是非、皆さんのやり方もシェアして教えてくださいね。
ここまで読んでくださってありがとうございます。では、また!